示談したのに被害届を出されることはある?|示談後の捜査への影響と対処法

刑事事件において、加害者と被害者の間で「示談」が成立することは、事件解決への大きな一歩です。しかし、実際には「示談書を交わしたのに被害届を出された」「示談したのに警察から呼び出しが来た」というケースは少なくありません。

本記事では、示談成立後の被害届の扱い、捜査の継続性、そして法的リスクを回避するためのポイントを詳しく解説します。

1. 示談をしたのに被害届を出されることはあるのか?

結論から申し上げますと、「示談をした後に被害届が出されること」は起こり得ます。 主な理由としては、以下の3点が挙げられます。

  • 示談の内容に不備がある場合 示談書の中で「被害届を提出しない(または取り下げる)」という条項が含まれていない、あるいは口約束のみで書面化されていない場合、被害者が後に被害届を出してしまうことがあります。
  • 示談の効力が及ばない範囲がある 示談は、特定の犯罪事実に対して行うものです。事実関係の整理が不十分だと、示談の効力が及ばない部分が生じ、そこを理由に届出をされる可能性があります。
  • 被害者の心変わり 示談成立後に被害感情が再燃し、「やはり処罰してほしい」と警察へ相談に行くケースです。

2. 示談の内容と「事件の特定」を明確にする重要性

「示談したはずなのに」という食い違いを防ぐためには、「何の事件について、どのような合意をしたか」を明確にしなければなりません。 当事者同士で合意した場合、事件の特定が不十分なことがよくあります。後から「実際の事件内容が違っていた」と主張され、示談の効果を否定されるリスクを避けるため、以下の点に注意が必要です。

  • 事実の共有 当時何があったのかを整理し共有し、被害者が納得した上で示談を成立させる必要があります。
  • 書面化の徹底 口頭での示談や、名目不明の「お見舞金」の支払いは、後日「示談は成立していない」と主張される原因になります。必ず明確な「示談書」を作成しましょう。

3. 被害届の取り下げと「示談」の効果を確実にする条項

捜査が進んでしまうリスクを最小限にするには、法的に有効な示談書に以下の3つの要素を盛り込むことが不可欠です。

  1. 清算条項(民事的解決) 「本件に関し、今後一切の債権債務関係がないことを確認する」という文言により、後日の金銭的な蒸し返しを防ぎます。
  2. 宥恕条項(刑事的解決) 「被害者は加害者を許し、刑事処罰を望まない」という意思表示を明記します。これが不起訴処分の鍵となります。
  3. 被害届の取下げ合意(手続的解決) 「被害者は被害届を取り下げる」旨を記載し、実際に取下書を作成します。

4. 示談が成立しても「捜査」は続くのか?

誤解されやすい点ですが、「示談=即座に捜査終了」ではありません。 日本の刑事手続では、捜査を継続するかどうかは捜査機関(警察・検察)が判断します。

① 親告罪の場合

器物損壊罪や名誉毀損罪などの「親告罪」では、被害者の告訴が起訴の条件です。示談によって「告訴の取下げ」が行われれば、検察官は起訴できなくなり、事件は終了します。

② 非親告罪(窃盗、傷害など)の場合

日本の多くの犯罪は「非親告罪」です。この場合、たとえ示談が成立して被害届が取り下げられても、捜査機関は捜査を継続し、起訴することが可能です。 ただし、「被害者が許している(宥恕)」事実は、検察官が「不起訴処分」を下す際の極めて重要な判断材料になります。

5. 示談後の不安は、弁護士へご相談ください

「示談したから安心」と思っていると、ある日突然警察から呼び出しがかかり、刑事手続が進んでしまうことがあります。 こうした事態を防ぐためには、示談は成立していたのか、捜査機関は示談の内容を理解しているのか、あるいは改めて示談交渉が必要なのかを的確に整理しなければなりません。

弁護士は、あなたに代わって被害者と交渉し、後日の紛争を防ぐ法的に有効な示談の締結、および捜査機関への適切な働きかけを行います。示談やその後の手続に不安を感じている方は、お早めにご相談ください。