示談したのに被害届を出されることはある?|示談後の捜査への影響と対処法

2026年2月16日

1. 示談をしたのに被害届を出されることはあるのか?

刑事事件において、加害者と被害者の間で「示談」が成立することは、事件解決への大きな一歩です。しかし、実際には「示談書を交わしたのに被害届を出された」「示談したのに警察から呼び出しが来た」ということもあり得ます。

主な理由としては、以下の3点が挙げられます。

  • 示談の内容に不備がある場合 示談書の中で「被害届を提出しない(または取り下げる)」という条項が含まれていない、あるいは口約束のみで書面化されていない場合です。被害者が、被害届については何も定めていないとして、後に被害届を出してしまうことがあります。
  • 示談の効力が及ばない範囲がある 示談は、特定の犯罪事実に対して行うものです。事実関係の整理が不十分だと、示談の効力が及ばない部分が生じ、別の事件であるとして被害届を出される可能性があります。
  • 被害者の心変わり 示談成立後に被害感情が再燃し、「やはり処罰してほしい」と警察へ相談に行くこともあります。

2. 被害届の取下げと「示談」の効果を確実にする条項

捜査が進んでしまうリスクを最小限にするには、示談書に以下の3つの要素を盛り込むことが不可欠です。

  1. 清算条項(民事的解決) 「本件に関し、今後一切の債権債務関係がないことを確認する」という文言により、後日の金銭的な蒸し返しを防ぎます。
  2. 宥恕条項(刑事的解決) 「被害者は加害者を許し、刑事処罰を望まない」という意思表示を明記します。これが不起訴処分の鍵となります。
  3. 被害届の取下げ合意(手続的解決) 「被害者は被害届を取り下げる」旨を記載し、実際に取下書を作成します。

清算条項や宥恕条項があれば、実体的には紛争は解決したといえます。しかし、当事者において、そのような理解をするかは、本人の考え方による場合もあります。

明示的に被害届の取下げを合意することは、具体的な行為や手続きについて分かりやすく確認するという意味で、価値があります。

3. 示談の内容と「事件の特定」を明確にする重要性

「示談したはずなのに」という食い違いを防ぐためには、「何の事件について、どのような合意をしたか」を明確にしなければなりません。 当事者同士で合意した場合、事件の特定が不十分なことがあります。後から「実際の事件内容が違っていた」であったり、「これは別の事件だ」と主張され、示談の効果を否定されるリスクを避けるため、以下の点に注意が必要です。

  • 事実の共有 当時何があったのかを整理し共有し、被害者が納得した上で示談を成立させる必要があります。
  • 書面化の徹底 口頭での示談や、名目不明の「お見舞金」の支払いは、後日「示談は成立していない」と主張される原因になります。必ず明確な「示談書」を作成しましょう。

事件の特定としては、例えば、単に「当事者間の事件について」だけではなく、いつ、どのような態様で、どのような事件が生じたのか、詳しく記載することが望ましいです。

4. 示談が成立しても「捜査」は続くのか?

誤解されやすい点ですが、「示談=即座に捜査終了」ではありません。 示談が成立したとしても、捜査を継続するかどうかは捜査機関(警察・検察)が判断します。

① 親告罪の場合

器物損壊罪や名誉毀損罪などの「親告罪」では、被害者の告訴が起訴の条件です。示談によって「告訴の取下げ」が行われれば、検察官は起訴できなくなり、事件は終了します。

② 非親告罪(窃盗、傷害など)の場合

多くの犯罪は「非親告罪」です。この場合、たとえ示談が成立して被害届が取り下げられても、捜査機関は捜査を継続し、起訴することが可能です。 ただし、「被害者が許している(宥恕)」事実は、検察官が「不起訴処分」を下す際の極めて重要な判断材料になります。

5. 示談内容を適切に確認する

「示談したから安心」と思っていると、ある日突然警察から呼び出しがかかり、刑事手続が進んでしまうことがあります。 こうした事態を防ぐためには、示談は成立していたのか、捜査機関は示談の内容を理解しているのか、あるいは改めて示談交渉が必要なのかを整理する必要があります。

示談が成立しているのであれば、捜査機関に対して、示談書を提示するなどして示談が成立していることを伝え、処罰の必要性がないことを理解してもらいます。

他方で、示談が成立してない、あるいは不十分な場合には、改めて示談交渉をするかを決めなければなりません。