不起訴処分告知書の取得と活用法|刑事手続終了後の証明手続と勤務先への対応

1.刑事手続の終局処分である不起訴の通知と書類交付

刑事事件において、検察官が裁判を請求しないと決定することを不起訴処分と呼びます。この処分が下されると、刑事手続は一応の終結を迎え、身体拘束されている場合は直ちに釈放され、前科がつくこともありません。国家による刑罰権の行使を免れるという意味で、非常に重大な決定であり、生活の再出発への転換点となります。

しかし、不起訴処分が決定したとしても、検察庁から被疑者に対して自動的にその旨を記した書面が渡されたり自宅に郵送されるわけではありません。検察官は被疑事件について公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときに、速やかにその旨を被疑者に告げなければならないと規定されています(刑事訴訟法第259条)。

刑事訴訟法

第二百五十九条 検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。

「被疑者の請求があるときは」とされていますから、不起訴になったという事実を客観的に証明する公式な書類を手に入れるためには、被疑者側から請求を行う必要があります。

さらに、「告げなければならない」とされていますが、実務上は、口頭での告知にとどまらず、書面による証明として不起訴処分告知書が発行されることが一般的です。

刑事手続の被疑者となった状況では、手続きが本当に終わったのか、また呼び出しがあるのかを気にしないで生活して良いのかが分かりづらく、不安定な状況が続きます。検察官からは、不起訴になったことさえ連絡がくることはありません。

検察庁に連絡することは抵抗がある方もおられますが、刑事手続きの終了を確認するためにも、処分の事実確認と、不起訴処分告知書の請求を行うことで、明確な区切りをつけることができます。

2.不起訴処分告知書の具体的な請求手続と受領方法

(1) 請求と受領

不起訴処分告知書を取得するための具体的な手順としては、まず対象となる事件を担当していた検察官、またはその検察官が所属する検察庁の担当部署に対して、不起訴処分告知書の交付を希望する旨を直接申し出ることになります。この申出は電話で可能なことが多いです。

この申出を行うと、検察庁において書類の準備が行われます。書類が完成した後は、検察庁から連絡がきます。書類の受領は、原則として郵送での対応ではなく、被疑者本人が当該事件を管轄する検察庁に直接赴いて受け取ることになります。この際、検察官から書類を求める使途や具体的な理由について深く問いただされることは通常ありませんので、特段の身構えは不要です。

(2) 弁護人への依頼

なお、事件の捜査段階で弁護人を選任していた場合、その手続きを弁護人に委託することができるかについては、選任の形態によって異なります。

私選弁護人を選任していた場合は、処分後も引き続き委任関係を維持して手続きの代行を依頼することが可能です。弁護人に対して、不起訴処分告知書を受け取りたいと伝えれば、弁護人が検察庁に連絡して、書類の授受まで進めることができます。

しかし、国選弁護人の場合は事情が全く異なります。国選弁護人は、刑事訴訟手続の進行に応じてその職責が法的に規定されています。そして、被疑者が釈放されたときは、国選弁護人の地位は失われます(刑事訴訟法第38条の2)。そのため、国選弁護人が付いていた事案において不起訴となった後は、すでに弁護人が存在しない状態となるため、被疑者本人が自ら検察庁に対して申請を行う必要があります。

検察庁での書類の受領は、平日の日中に出向くことになるため、スケジュール調整が必要になります。本人が直接出向くことが難しい事情がある場合には、委任状を用いた代理人による受領が可能かなど、事前に検察庁と調整を行うことになります。

3.不起訴の具体的な理由が開示されない制度

不起訴処分告知書を受け取ったとしても、その書面の中に、なぜ不起訴になったのかという詳細な理由や捜査の経緯が具体的に記載されているわけではありません。

法律上、検察官が公訴を提起しない処分をした場合に、その理由を告げなければならないと義務付けられているのは、告訴人、告発人、または請求人といった被害者側の立場にある者に限られています(刑事訴訟法第261条)。

第二百六十一条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。

被害者等から請求があった場合には、検察官は速やかに不起訴の理由を告げるべきとされていますが、これに対して被疑者に対する理由の告知義務は明文で定められていません。

検察官が口頭で、あるいは尋ねられた際に大まかなニュアンスを説明してくれることはありますが、これも確実なものではありません。書面においては、具体的な捜査内容や判断理由が明記されることはないと考えて差し支えありません。

不起訴処分告知書に記載される理由は、事件事務規程において定められた、極めて形式的な分類にとどまります。

具体的には、犯罪の嫌疑がないことが明白な場合の「嫌疑なし」、犯罪の嫌疑を補足する証拠が不十分である場合の「嫌疑不十分」、あるいは犯罪の事実は認められるものの被疑者の性格や年齢、境遇、犯罪の軽重、情状を考慮して訴追を必要としないとする「起訴猶予」といった、数種類の裁定主文が印字されるのみです。

したがって、どのような証拠が決定打となったのか、あるいは被害者との間で交わされた示談がどのように評価されたのかといった、個別具体的な判断のプロセスを書面から読み取ることは不可能です。口頭での説明を求める場合であっても、検察官に義務があるわけではないため、お願いをするという姿勢が基本となります。

4.会社や勤務先から処分結果の証明を求められた場合の対応と注意点

刑事事件の被疑者となった事実がすでに勤務先に知れてしまっている場合、あるいは事件に関連して長期の欠勤や休職を余儀なくされていた場合などには、職場への復帰や今後の身分の処遇を決定するにあたり、刑事手続の結果を証明する書類の提出を求められることがあります。

社会的な信用を回復し、復職や雇用の維持を円滑に進めるための客観的な説明材料として、不起訴処分告知書は国家機関が発行した信頼性の高い事実を示す有効な手段となり得ます。特段の事情がない限り、検察庁に申請すれば速やかに交付されるため、勤務先から公式な証明を求められた場合は、前述の手続きを経て書類を確保し、説明に供することが推奨されます。

しかしながら、不起訴処分告知書は極めてプライベートかつセンシティブな情報が含まれた書面です。そこには、被疑者となった本人の氏名だけでなく、罪名や事件番号、および処分を下した検察庁の名称が明記されています。もし勤務先にこの書類を提出したり、提示したりする場合には、その取扱いに細心の注意を払うべきです。会社側において人事担当者や限られた経営層のみが閲覧する体制が整っているかを確認し、必要以上の範囲に情報が拡散しないよう配慮を求めることが不可欠です。

また、いくら不起訴という無罪推定に準じる結果であっても、刑事事件に関与したという事実そのものが社内で不用意に共有されれば、人事上の不利益や人間関係の悪化といった、法的な処分とは別の実質的な不利益が生じる恐れがあります。就業規則における懲戒処分の要件を満たさないことを証明するための手段になる一方で、取り扱いを誤れば予期せぬ名誉毀損や不利益を被るリスクもあります。

書類の提出を求める会社の意図を事前にしっかりと確認し、提出ではなく提示にとどめるなど、自己のプライバシーと名誉を保護するための措置を講じることが重要です。

5.不起訴処分獲得後の社会復帰に向けた初期対応と留意すべき事項

不起訴処分が下された直後の時期は、刑事手続に伴う精神的な重圧から解放される一方で、失われた社会的な信用や日常生活の基盤をいかに再構築していくかという段階でもあります。

まず最初に行うべき行動は、事件に関係した各方面との法的な関係の整理です。特に被害者が存在する事案であり、示談が成立したことによって起訴猶予による不起訴となった場合などは、示談条項に定められた内容を誠実に履行することが求められます。示談金の支払いや、被害者への接触禁止条項などの合意事項がある場合、これに違反するような行為は絶対に避けなければなりません。

万が一、示談内容に違反した場合には、民事上の損害賠償請求(民法第709条)を受けるだけでなく、悪質な事案であれば、一度下された不起訴処分であっても、再捜査が行われ、結果として起訴に至るという例外的な道筋は依然として残されています。

また、インターネット上やSNS等において、自らの潔白を過度に主張したり、事件の詳細を軽率に発信したりすることも望ましくありません。不用意な情報発信は、被害者の感情を逆なでして民事上のトラブルを再燃させる原因となるほか、勤務先や周囲の人々との間に不要な摩擦を生む原因となります。

刑事手続が終了したからといって、すべての法的責任が消滅したわけではありません。社会的な復帰を確実なものにするためには、処分結果の書類を適切に確保し、必要最低限の関係者に対して誠実かつ冷静に事実を説明した後は、静かに日常生活へと戻る姿勢を維持することが、平穏な生活を取り戻すための堅実な道となります。

警察から「次は検察から連絡があります」と言われた後に連絡がないとき|不起訴処分の可能性と検察官への確認手続き
1.警察の捜査終了後に長期間連絡がない状況の背景と実態 警察での取調べを終え、「今後は検察から呼び出しがあると思います」と告げられたまま、数ヶ月以上も音沙汰がな…
ohj.jp