「供述調書」の署名拒否と訂正申立|取調べ現場での防御権

1.取調べで作成される「供述調書」が持つ法的な重みとリスク

警察や検察による取調べを受けると、捜査官はあなたの話した内容を「供述調書」という書面にまとめ、それに署名・押印することを求めてきます。供述調書の文言は、捜査官が作成するものですが、刑事手続において供述調書が持つ意味は極めて重いものです。一度あなたが供述調書に署名・押印すると、後の裁判で「本人が認めた事実」として強力な証明力を持つことになります。

もし、供述調書の内容が自分の意図とは異なるニュアンスで記載されていたとしても、あなたの署名がある以上、裁判になってから「署名したが、本当は違う」として覆すことは非常に困難です。捜査官は、犯罪の構成要件に合致するように言葉を選んで調書を作成する傾向があります。そのため、何気なく署名した供述調書が、後の裁判で決定的な証拠になってしまうことがあります。取調べの場は、単に事実を話す場所ではなく、将来の裁判手続が実質的に始まっているとの認識を持つことが必要です。

2.納得いかない供述調書への「署名拒否」は正当な防御権である

取調べの最後に、捜査官が供述調書の読み聞かせが行われ、署名と指印(または押印)を求められます。このとき、署名を拒否することは法律で認められた正当な権利です。

捜査官の中にはいまでも「署名するのが当たり前だ」「拒否するのは反省していない証拠だ」などと説得しようとしてくる者もいるようです。しかし、そもそも供述調書はあなたの意思に基づく供述を記録するものであることに加え、署名するか否かは完全にあなたの自由です。内容に納得いかないときはもちろん、内容に関わりなく、署名を拒むことは決して不当な態度ではありません。もし執拗に署名を求められたら、捜査官はあなたが証明しないと困るのかもしれません。

3.一字一句の修正を求める

調書の内容が全体としては間違っておらず、署名する意思があるときでも、特定の表現が自分の感覚とズレている場合があります。供述調書の細かな表現の違いが犯罪の客観的な構成要件や故意の認定に影響することもあります。このような場合、あなたは内容の修正や追加、削除を求めるべきです。

「この言葉は使っていないので削ってほしい」「この説明を追加してほしい」という要求に対し、捜査官は応じる義務があります。もし捜査官が「大筋で合っているからいいだろう」と修正を拒んだとしても、修正されないのであれば署名はしないという姿勢でいるべきです。一字一句にこだわり、自分の供述が正確に反映されるまで何度でも訂正を求めることは、取調べを受ける側の当然の態度です。

繰り返しますが、後から「捜査官に説得された」という主張を通すことは極めて難しいことが多いです。なぜなら、実務上、客観的証拠としては、署名した供述証書しかないからです。「捜査官が説得した」客観的証拠は、取調べが録音録画されている例外的なとき以外には存在しません。

4.取調べ現場で孤立しないために

取調べは密室で行われるため、心理的なプレッシャーから本来の権利を行使できなくなることが珍しくありません。仕事として手慣れた捜査官と、初めて取り調べを受ける被疑者とでは、精神的な負担に雲泥の差があります。署名を拒否することが難しいことが現実です。そのようなときは、供述証書の具体的な内容を捜査官と議論するのではなく、「弁護士と相談してから決める」と伝えるのも方策です。

供述証書の控えをもらうことはできませんが、気になった表現について、弁護士と話し合い、署名してよいのか検討することができます。また、取調べの状況を詳細に弁護士に報告しておくことで、不当な取調べが行われた際の証拠として残すことも可能です。

取調べは、日常とはかけ離れた異常な空間です。署名に迷ったときは、場合によっては署名してもいいぐらいの気持ちで対応することも必要です。取調べに適切に対応することが、自身の身を守ることにつながります。