第三者を介した投資・ビジネスの頓挫における返金義務|仲介した者としての責任

1.知人から預かったお金の返還義務

知人からお金を受け取り、それを特定のビジネス先に預けたものの、その相手と連絡が取れなくなってしまったという状況において、知人に対する返還義務があるかどうかは、両者の間にどのような性質の契約が成立していたかによって結論が分かれます。

(1) シンプルな金銭消費貸借の場合

一般に、他方から金銭を受け取って後日これと同額のものを返還することを約束する合意は、金銭消費貸借契約に該当します(民法第587条)。

この契約が成立していると判断される場合、借りた側は、そのお金をどのように運用したか、あるいはその運用先でどのような不測の事態が生じたかに関わらず、約束の期日に全額を返還する義務を負います。

ビジネス先が資金を持ち逃げした、あるいは事業に失敗して連絡を絶ったという事情は、貸主である知人との関係においては、返済を拒む正当な理由にはなりません。

(2) 仲介にすぎない場合

一方で、自身の役割が単に知人のお金をビジネス先へと届ける仲介役に過ぎず、知人自身がそのビジネスの危険性や損失のリスクを直接引き受けていたと評価できる場合もあります。これは、法律上は委任や準委任、あるいは共同で事業を行うための組合契約に近い性質を持つものと考えられます(民法第643条、第656条、第667条)。

こうした事務処理の委託としての性質が認められる状況であれば、受任者は善良な管理者の注意義務をもって適切にお金を相手方に渡すという職務を果たしていれば、ビジネス自体が破綻して返金が受けられなくなったとしても、知人に対して補填する義務はないのが原則です。

しかし、金銭が一度自身の口座に入金されたり、手渡しで直接交付されたりしている事実がある以上、対外的には金銭の貸し借り、すなわち消費貸借があったと推定されやすいのが実情です。お金を渡したという目に見える事実に対して、それが単なる取次であったという内実を認めてもらうためには、説得的な根拠が必要です。

2.契約書が存在しない場合の合意内容の立証プロセスと証拠の限界

書面による契約書が交わされていない状況において、知人との間でどのような合意があったかを確定させるためには、過去のやり取りの履歴を客観的に精査していくことになります。

自身としては、ビジネス先のリスクを知人も承知のうえでお金を出したのだから、返金不能の責任は知人が負うべきだと主張したい場合であっても、それを裁判の手続きなどで認めてもらうためには具体的な証拠が必要です。なぜなら、金銭を直接交付した知人の側からすれば、返さなくてよいという合意をした覚えはないと主張することが通常であり、権利を放棄したり多大なリスクを背負ったりするような合意は、書面がない限り認定されづらいからです。

スマートフォンのメッセージアプリや電子メールの履歴に、ビジネスの内容や利回りの良さについての会話が残っていたとしても、それだけで知人がリスクを引き受けたと証明することは困難です。単に「このようなビジネスに投資するためにお金が必要だ」という話題が出ていたという事実だけでは、金銭消費貸借契約における使途の動向を説明したに過ぎないと判断される可能性が高いです。返還義務を免除する合意があったことの証明には不十分です。

さらに、ビジネス先の業者が知人の存在や氏名を認識しておらず、自身の名義でのみ取引が行われていたような状況では、知人とビジネス先との間に直接の契約関係があったと構成することは著しく困難になります。業者が知りもしない人物との間で契約が成立しているとみなす余地は乏しく、結果として、知人から自身への金銭交付と、自身から業者への金銭交付という、二つの独立した法的な動きが存在したと判断されやすくなります。メッセージの履歴において、リスクの分配について正面から明示的に議論し、双方が納得していたという形跡が明確に残っていない限り、自身が責任を免れるという主張を通すことは容易ではありません。

3.トラブル発覚直後に講じるべき証拠の保全と事実関係の整理

ビジネス先との連絡が途絶え、知人への返金が危ぶまれる状態に陥ったとき、初期段階で取り組むべきなのは、事実関係の把握と客観的な証拠の保全です。

激しい焦りや当惑から、知人に対して「必ず何とかして返す」といった安易な約束を口頭やメッセージで送ってしまうことは、後々の法的判断において決定的な不利益を招く原因となります。仮に本来は返還義務がないような仲介の性質を持つ事案であったとしても、トラブル後に「返す」という明確な意思表示をしてしまうと、それが新たな債務の承認や、損失を補填する契約の成立とみなされてしまう危険があります(民法第152条)。

現時点で手元にあるすべての客観的データを現状のまま保存することが重要です。知人との間で交わされた最初の勧誘段階からのメッセージ履歴、通帳の入出金記録、ビジネス先に対する送金の明細、さらにはビジネス先から提示されていた事業説明の資料や、連絡が取れなくなる直前までのやり取りのすべてを、消去することなく整理します。ビジネス先に対して、いつ、どのような手段で連絡を試み、それが拒絶されたかという経緯も、自身の誠実な事務処理を証明するための重要な事実となります。

同時に、知人に対しては、自身も現在ビジネス先と連絡が取れなくなっており、事実関係を調査中であるという客観的な事実のみを伝え、感情的な対立を生じさせないよう配慮すべきです。

4.二次被害を防ぐための金銭授受における事前の防衛策

他人の金銭を取り扱うという行為が、重い法的責任を伴うものです。知人から魅力的なビジネスへの参加を打診されたり、自身が関与している計画に知人を誘いたくなったりしたとしても、自身が間に入ってお金を預かるという形態は原則として避けるべきです。

もし知人がそのビジネスを信頼して資金を投じたいと望むのであれば、知人とビジネス先が直接に契約を締結し、資金も直接送金させるという方法をとるべきです。そうすれば、万が一ビジネス先が破綻したり連絡を絶ったりしたとしても、それは知人とビジネス先との間の問題であり、自身が法的トラブルの渦中に巻き込まれる可能性は激減します。

どうしても直接の取引が難しく、自身が窓口にならざるを得ない特別な事情がある場合には、金銭を受け取る前に、不測の事態が生じた際のリスク分配を明記した書面を作成しなければなりません。例えば、ビジネス先からの返金が途絶えた場合、その損失はすべて知人が負担し、自身は一切の補填義務を負わないという条項を契約書の中に明示するなどが考えられます。

他人の金銭を自身の口座や手元を経由させるということは、それ自体が周囲に対して、自身がその資金の帰趨に責任を持つという外観を作り出します。親しい間柄であっても、お金が絡む以上は法的なリスクが常に背中合わせであることを忘れず、書面のない曖昧な金銭のやり取りは行わないことが、自身の生活を守るための防衛策となります。