民事訴訟における最終準備書面の活用法|証人尋問後の主張整理と提出手順

1.民事訴訟における準備書面の役割と最終準備書面が持つ法的位置づけ

民事訴訟においては、原告が訴状を裁判所に提出し、被告がこれに対する反論として答弁書を提出することから審理が始まります。その後の審理過程において、当事者双方が自己の主張を記載し、相手方の主張に対する認否や反論を行うために提出する書面が準備書面です(民事訴訟法第161条第1項)。

訴訟が長期化すれば、双方が提出する準備書面の通数は増えていきます。実務上は、どちらが提出した書面であるかを明確にする便宜のため、「原告準備書面」や「被告準備書面」といった形で、提出当事者を並記することがあります。また、同一の表題の準備書面とならないよう、「第1準備書面」「準備書面1」「準備書面(1)」のように連番を付すことが多いです。

ただし、法的には表題に関する規定は存在しないため、単に準備書面と標記して提出しても、何ら問題ありません。むしろ法律に忠実と言えるかもしれません。

こうした一連の書面提出の締めくくりとして提出されるのが、いわゆる最終準備書面です。この名称は法に規定された用語ではなく、審理の最終段階で提出される準備書面を指す実務上の慣用表現です。

裁判における争点が整理され、双方の主張が出揃った後、証人尋問や当事者尋問といった人証調べが終了した段階で提出されます。これまで断片的に提出されてきた個々の主張や提出済みの証拠を整理し、自らの主張の正当性を改めて裁判所に提示する役割を果たします。

もちろん、最終準備書面の提出は義務ではありません。これまでの審理で主張立証が足りていると考える場合には、最終準備書面を提出しないことも十分あり得ます。

2.最終準備書面に盛り込むべき要素

最終準備書面において中心的な役割を果たすのは、人証調べを通じて明確になった事実関係の整理と、提出済み証拠の評価です。法的な主張そのものは、既に人証調べ前に主張を尽くしているはずですので、新しく追加することは本来は予定されていません。

民事訴訟の審理終結間際に行われる証人尋問や当事者尋問では、当事者や証人の発言内容から、これまで提出した証拠では裏付けできなかった事実について、補強や反論が可能になります。最終準備書面では、尋問手続によって得られた供述内容を精査し、どの発言が他のどの証拠や事実と整合するのか、あるいは矛盾するのか、あるいは相手方当事者の供述にどのような不自然さや変遷が存在するかを記述します。

裁判官は、提出された証拠と尋問を総合的に考慮して事実認定を行います(民事訴訟法第247条)。そのため、単に尋問の文字起こしをなぞるのではなく、客観的証拠との整合性を論理的に組み立て、自らの主張する事実が妥当であることを裁判官に確信させることが目標になります。

過去の準備書面で示してきた法的構成と、尋問結果によって補強された事実関係とを整理することで、理想としては判決で書かれるべきである内容を含めた準備書面を作成します。

3.裁判手続きにおける提出タイミング

最終準備書面を提出するにあたっては、提出の有無やタイミングについて、事前に裁判長と調整をしておくことが望ましいです。

(1) 尋問後に期日がある場合

事実関係が複雑な事件であったり、法律構成が複雑である事件の場合、あるいは尋問後に和解が予定されている事件の場合は、尋問後に期日が設けられることがあります。その場合は、その尋問後の期日において、最終準備書面を陳述することが可能です。

そのような場合は、尋問当日の尋問が終了した段階で、次回期日の確認と最終準備書面の提出の有無や期限が指示されます。

(2) 尋問当日に結審する場合

尋問後に期日が設けられないことも珍しくありません。尋問後に結審され、次回期日は判決期日となってしまいます。この場合、最終準備書面を陳述することができません。

ただ、このような場合でも、尋問後に裁判長に対して、最終準備書面を提出したいと述べれば、提出すれば内容は確認するとされることが多いです。

しかし、最終準備書面を提出するだけの十分な期間が確保されるとは限りませんし、裁判長が、最終準備書面の内容を確認しないまま判決起案を開始してしまう可能性もあります。

4. 裁判長との最終準備書面提出の事前確認

最近では、裁判の迅速化などの要請からか、裁判長から最終準備書面の提出を前提としない訴訟指揮が行われることは珍しくありません。つまり、尋問後直ちに結審されることが多いです。

そのため、どうしても最終準備書面を提出したい場合には、できれば尋問期日の設定する段階で、人証調べの結果を踏まえた最終準備書面を提出したい旨を明確に伝えておくべきです。事前に申し出を行えば、裁判長は最終準備書面の提出を考慮した日程を設定します。

もし、尋問当日に結審するという迅速さを重視する裁判長であったとしても、判決期日まで余裕を設けて、最終準備書面を提出するだけの時間が確保できることがほとんどです。

尋問後の最終準備書面は、尋問調書が作成され、それを当事者が確認し、最終準備書面を作成するという過程を経るために、それなりの期間が必要です。具体的には、短くとも1か月、尋問調書の完成に2週間かかるとすれば2か月弱は欲しいところです。それだけの期間を確保するためにも、最終準備書面の提出の意向は、できるだけ早めに裁判長に認識してもらうことが安全です。

5.陳述を行わない最終準備書面の効力と判決への影響

結審後に準備書面を提出することに意味があるのか疑問に思う方もいるかもしれませんが、これには意味があります。

民事訴訟においては、提出された書面は裁判の期日において口頭で陳述されることによって初めて主張としての法的効力を生じます(民事訴訟法第161条第2項)。法的な主張は、陳述されなければ、裁判官は採用することができません。

しかしながら、証拠の評価については、あえて陳述しなくとも、裁判官の目に触れればその役割を果たすことができます。証拠の評価や自由心証に基づく事実認定は、専ら裁判所の権限に属する事項であるためです(民事訴訟法第247条)。つまり、裁判官の権限に属することを準備書面に記載することは、具体的に民事訴訟上の法的効果を有するものではなく、裁判官の判断に対する意見や提案としての位置づけなのです。

そして、尋問後に提出する最終準備書面の主な目的は、新たな法律上の主張を追加することではなく、既に存在する証拠や尋問結果に対する評価や論理の整理を裁判官に提示することにあります。したがって、期日で陳述を行わなくても、裁判官が事前に提出された最終準備書面の内容を確認し、判決書を作成する際の判断材料として考慮すれば、その目的は達成されるのです。

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