1.代わりの保証人を立てる法的な義務の有無
奨学金や事業資金、あるいは個人的な借り入れにおいて、保証人や連帯保証人が死亡した際、債権者から「すぐに代わりの人を立ててください」と連絡を受けると、どうしてよいか迷う方もいるでしょう。
まず行うべき行動は、当初締結した金銭消費貸借契約書や保証委託契約書などの内容を確認することです。契約において、保証人が死亡した場合や破産手続開始の決定を受けた場合などに、債務者が新たな保証人を立てる義務(代担保の提供義務)が明記されているかどうかです。
もし、契約条項や約款のなかにそのような記載が存在しなければ、債権者の要求に応じる法的な義務は発生していません。債権者としては、保証人という人的担保を失うことで債権回収のリスクが高まるため、事実上のお願いとして新たな保証人を要求しているに過ぎず、これに応じないことによって法的なペナルティを受けることはありません。お世話になった方が亡くなったという事情もあり、債務者としては、債権者に対して道義的な責任を感じるかもしれませんが、法的な対応としては現状のまま返済を継続することになります。
他方で、契約書に新たな保証人を立てる義務が明確に定められている場合があります。その場合は、契約条項に従う必要があります。この義務を果たさない場合、債権者との契約違反となり、不利益を被る可能性があります。
2.新たな保証人を用意できない場合に生じる期限の利益の喪失
契約上、新たな保証人を立てる義務があるにもかかわらず、それを用意できない場合、懸念されるのが「期限の利益の喪失」です。期限の利益とは、約束した期日が来るまでは借金を返済しなくてもよい、あるいは毎月決められた期日に分割で少しずつ返済すればよいという、債務者にとっての法的な利益を指します(民法第136条)。
保証人を立てるという契約上の義務に違反した場合、この期限の利益を失う旨が契約書に定められていることがあります。期限の利益を喪失すると、債務者は分割で支払う権利を失い、債権者から残金の一括返済と、遅れた日数分の遅延損害金を加算して請求されることになります。
念のためですが、ここで注意すべき行動があります。一括請求を恐れるあまり、親族や知人の名前を無断で使用し、勝手に署名や押印をして保証人欄を埋めて債権者に提出することは、絶対にしてはなりません。保証契約は債権者と保証人との間で結ばれる契約であり、保証人本人の明確な承諾がなければ成立しません(民法第446条)。
他人の名前を無断で署名押印をする行為は、有印私文書偽造罪や同行使罪、あるいは債権者を欺く詐欺罪といった重大な犯罪に該当する可能性があります(刑法第159条、第161条、第246条)。また、民事上も無権代理行為として扱われ、法的に有効な保証契約にはなりません。
このような不正行為が発覚した場合、債権者からの信頼は完全に失われ、即座に法的な回収手続きに移行されるだけでなく、刑事告訴・告発をされる危険すらあります。取り返しのつかない事態を招かないよう、適法かつ誠実な手段のみを選択しなければなりません。
3.親族や知人に保証人を依頼する困難さ
適法に新たな保証人を立てるためには、親族や知人などに現在の借入れの事情を包み隠さず説明し、納得して引き受けてもらう必要があります。しかし、他人の借金の保証人、特に連帯保証人になるということは、非常に重い負担を背負うことになります。
単なる保証人とは異なり、連帯保証人は、主たる債務者が有する「まずは債務者本人に請求してくれ」と主張できる催告の抗弁権や、「債務者本人の財産から先に差し押さえてくれ」と主張できる検索の抗弁権を持ちません(民法第454条)。つまり、実質的に債務者本人と全く同じ返済義務を負うことになります。
仮に債務者が支払えなくなり、連帯保証人が代わりに返済をした場合、連帯保証人は債務者に対して立て替えた分を請求する権利である求償権を取得します(民法第459条)。しかし、現実問題として、債務者本人が返済できないほどの経済状況に陥っている以上、求償権を行使したところで財産を回収できる見込みは極めて低く、最終的には連帯保証人が多額の負債をそのまま被ることになります。なお、このようなリスクを負うことは、通常の保証人も大きくは変わりません。
このような人生を左右しかねない重い責任を伴うため、家族という強固な関係性や、事業上の取引においてどうしても連帯保証人にならざるを得ない特段の事情がない限り、突然の依頼に対して快諾する人は通常いません。債務者としては、他者の生活や将来を脅かしかねない重大な依頼をしているという事実を理解し、相手が難色を示した場合には無理な勧誘や説得を控えなければなりません。
4.支払いを継続する場合(人的担保の代わりの代替手段)
新たな保証人という人的担保を見つけることが実質的に不可能である場合、そのまま放置すれば期限の利益を喪失し、一括請求を受けることになります。保証人の死亡という、債務者本人にはどうすることもできない事情によって窮地に立たされた場合、このような事態を回避するための代替案として、債権者と交渉し、人的担保以外の方法で信用を補完することが考えられます。そもそもの契約条項に定められている場合も珍しくありません。
(1)物的担保の提供
一つの方法が、物的担保の提供です。
債務者自身が不動産や有価証券などの一定の価値を持つ財産を所有している場合、それらに抵当権や質権を設定して担保として差し出すことで、債権者の承諾を得られる可能性があります。
(2)機関保証制度の利用
もう一つの方法が、機関保証制度の利用です。
機関保証とは、個人の代わりに信用保証協会や民間の保証会社などの法人が連帯保証人となる仕組みです。奨学金などの制度においては、人的保証から機関保証への切り替えが認められている場合があります。
機関保証を利用するためには、保証会社に対する所定の審査を通過し、毎月の返済額に上乗せして、あるいは一括で保証料を支払う必要があります。経済的な負担は増加しますが、個人の保証人を探して頭を下げて回る精神的な負担から解放され、かつ一括請求という致命的な事態を避けながら分割返済を継続できるという利点があります。
保証人を用意できないことが判明した段階で、こうした代替手段の利用が可能かどうかを速やかに検討し、債権者に対して具体的な打開策を提案することで状況を前に進めることが可能となります。
5.支払いがすでに困難な状況における債務整理
ここまでの解説は、あくまで債務者本人に今後の返済能力があり、一括請求を回避して分割払いを継続するための対応策です。しかし、保証人が死亡した時点で、すでに毎月の支払いが滞っており、期限の利益を喪失している状況や、今後の経済的再建が著しく困難な状態にある場合は、対応の方向性を根本的に変えなければなりません。
すでに継続的な支払いができない状態において、無理に親族を説得して新たな連帯保証人に仕立て上げたり、なけなしの生活財産を担保に供したりすることは、結果的に新たな経済的な被害者を巻き込み、問題を拡大させる結果を招きます。
このように、客観的に見て借金問題の解決が見通せない状態においては、自己破産や個人再生などの債務整理手続を視野に入れる必要があります。たとえば自己破産を選択した場合、最終的に裁判所から免責許可決定を得ることで借金の支払い義務は法的に免除されます(破産法第253条)。債権者からすれば、当初契約していた保証人が死亡し、さらに主たる債務者が破産手続をとることで、貸し付けた資金の大部分を回収できないという大きな不利益を被ることになります。
債務者として、保証人をつけてまで借り入れた資金を返済できなくなることに対し、債権者に申し訳なく思う感情は不自然なことではありません。しかし、現在の収入や資産状況では到底完済できないという現実がある以上、法律の枠組みに則って生活の再建を図ることは正当な手続きです。返済のめどが立たないまま無理に新たな保証人を用意して被害を広げるよりも、早期に自身の経済状況を直視し、法的な手続きを通じて根本的な解決を図るべき局面があり得ることを、認識することが重要です。
