1.弁済期までの利息と弁済期以降の遅延損害金
金銭の貸借等の取引において、対価として支払う金銭には「利息」と「遅延損害金」が存在します。一見するとどちらも元金に一定の割合を乗せて支払う類似の金銭に見えますが、法的な性質と発生する要件は明確に区別されます。
(1) 利息
利息とは、元金を利用することの対価として、返済期日(弁済期)までの期間に応じて発生する金銭を指します。
(2) 遅延損害金
遅延損害金は、弁済期が過ぎたにもかかわらず返済が行われない場合に、履行遅滞という債務不履行によって発生した損害を賠償するために支払う金銭です(民法第419条第1項)。「遅延利息」と呼ばれることもあります。
2.合意がない貸金で後から請求される「利息」の法的効力と利息制限法による上限
金銭の貸し借り(消費貸借)において、利息が発生するためには当事者間での事前の合意が必要です。金銭消費貸借契約は、特約がない限り無利息です(民法第587条等)。契約時に利息について明示的な合意をしていない場合、貸主が貸し付けの後に「お金を貸したのだから利息を支払うのが常識だ」と主張したり、一方的に利息を計算して請求したりしても、借主に支払義務は生じません。
利息を有効に請求するためには、お金を渡す段階で利息を発生させる旨、およびその利率についての合意を交わしておくことになります。
また、当事者間で事前の合意が存在する場合であっても、設定する利率は無制限に自由というわけではありません。金銭の貸し借りにおける利息には法定の上限が設けられており、元本額が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%が限界となります(利息制限法第1条)。
この上限を超える利率の合意をした場合、上限を超過する部分は法律上無効となり、支払う義務はありません。さらに、著しく高い金利を設定した場合には刑事罰の対象となることも定められています(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条)。
3.「遅延損害金」の発生時期
返済期日までの利用対価である利息とは異なり、遅延損害金は当事者間で特別な合意がなくても弁済期を過ぎた時点で当然に発生します。
返済期限が定められている貸金であれば、その弁済期の翌日から債務不履行(履行遅滞)となり、遅延損害金の計算が開始されます(民法第412条第1項)。遅延損害金の利率について契約で何の取り決めもしていない場合、原則として民法が定める法定利率が適用されます(民法第419条第1項)。現在の民法における法定利率は年3%と設定されています(民法第404条第2項)。
当事者間の合意によって法定利率とは異なる遅延損害金率(約定遅延損害金率)を定めることも可能です。法定利率と比して高く設定することも低く設定することも可能ですが、利息と同様に上限が存在します。
金銭消費貸借における遅延損害金の利率は、利息制限法により、元本額に応じた利息の上限利率の1.46倍までに制限されています(利息制限法第4条第1項)。例えば、元金が100万円以上の場合の利息の上限は年15%ですので、遅延損害金の上限は年21.9%となります。この制限を超える遅延損害金の合意を行った場合も、超過部分は無効となります。
4.弁済期の定めがない貸金に「遅延損害金」が生じる時
契約書を作成せずに口頭でお金を貸した場合や、親族・知人間でのやり取りなどにおいては、返済の期限(弁済期)を定めないまま金銭が授受される事例が少なくありません。弁済期の定めがない貸金の場合、貸主はいつでも返済を求めること(催告)ができます。しかし、借主が直ちに資金を準備することは困難であるため、催告をしてから「相当の期間」が経過した時点で初めて弁済期が到来したとみなされます(民法第591条第1項)。
相当の期間とは、借主が返済資金を工面するために客観的に必要とされる時間を指し、具体的な金額や当事者の状況によりますが、通常は数日から数週間程度と考えられています。したがって、弁済期の定めがない貸金において遅延損害金が発生し始めるのは、貸主が催告を行い、その相当期間が経過した翌日からとなります(民法第412条第3項)。
なお、弁済期の定めがない事例であっても、発生する利息や遅延損害金の取り扱いに関するルールは変わりません。事前に利息の合意がなければ弁済期までの利息は無利息であり、相当期間経過後に発生する遅延損害金も、特別な合意がなければ法定利率である年3%で計算されます。
5.合意にない高額請求を受けた場合の対応
金銭トラブルにおいては、当事者間で合意が存在しないにもかかわらず、相手方から「事後的に主張された高額な利息」や「法定利率を超える不当な遅延損害金」を請求される事態が発生します。
相手方から強い口調で支払いを迫られたり、支払いが遅れている罪悪感から、断りづらいことはあるでしょう。しかし、法律上の根拠のない請求に応じる義務はありません。
不当な請求を受けた場合の初期対応として、まずは貸し借りが行われた当時のやり取り(借用書、メール、メッセージアプリの送信履歴、銀行の振込明細など)をすべて保存し、契約成立時にどのような条件で合意がなされたのかを改めて整理することです。忘れていた契約書が出てきたり、気に留めていなかったメールやメッセージが残っていることは、珍しくありません。
相手の請求に根拠がないことが分かれば、書面や記録に残る形式で支払いを拒絶する意思を伝えることが有効です。合わせて、相手が高額な利息や遅延損害金を請求する根拠について、開示を求めても良いでしょう。
