1.デリヘルでのトラブル
デリヘル(デリバリーヘルス)を利用した際、本来禁止されているはずの「本番行為(性交)」に至ってしまうケースは決して少なくありません。その場の空気に流されてしまったとしても、後になって冷静になると、「不同意性交等罪(旧強制性交等罪)で訴えられるのではないか」「店から高額な請求が来るのではないか」「警察に通報されて逮捕されるのではないか」といった深刻な不安に襲われることになります。
本記事では、デリヘルでの本番行為がどのような法的リスクを孕んでいるのか、店舗との契約関係および刑法の構成要件の観点から専門的に解説します。また、実際にトラブルに発展した場合の適切な対処法についても触れます。
2.店舗に対する「契約違反」と損害賠償請求
まず、刑事事件の前段階として、店舗およびキャストに対する民事上の責任について整理します。日本の風俗営業法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)等の規制において、デリヘル(無店舗型性風俗特殊営業)は、あくまで「性的好奇心に応じて客に接触する役務」を提供するものであり、性交(本番行為)の提供は法的に認められていません。
利用者がこれに違反して本番行為を行った場合、店舗との契約上の義務に違反したことになり、「債務不履行」に基づく損害賠償責任が生じます。
3.「不同意性交等罪」成立の境界線
利用者にとって最も懸念されるのは、拘禁刑を伴う重大な犯罪である「不同意性交等罪」の成否です。「不同意性交等罪(刑法177条)」では、相手方が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあること」に乗じて性交等を行った場合が処罰対象となります。
ここで最大の争点となるのは、キャストの「真実の同意」があったかどうかです。形式的に金銭の授受があったり、流れで許容されたような形をとっていたとしても、「性交への同意があった」とはいえないこともあり得ます。もし、利用者が「雰囲気で合意していた」と思っていても、キャストが「怖くて断れなかった」「拒絶できなかった」と主張した場合、不同意性交等罪の構成要件に該当する可能性があります。
密室での出来事であるため、客観的な証拠(録音やLINEのやり取り等)がない限り、当事者の言い分の信用性が、捜査段階や裁判で厳しく精査されることになります。
4.警察への通報リスクと現場の実情
「警察に通報されるか」という点は、実際に行われた行為と、キャストと店舗の動向に左右されます。通常、サービス終了後にキャストは店舗へ報告を行うため、そこまでにトラブルが発覚することが多いです。
同意による性行為の場合 店舗と利用者、店舗とキャストという二つの関係性において問題が生じたことになります。
店舗は、適法に運営し、「管理売春(売春防止法違反)」や「風営法違反」とならないようにするために、キャストと利用者の性行為を承認するわけにはいきません。そのため、利用者に対して、契約違反に基づき損害賠償(示談金)を請求をすることになります。具体的には、店舗が事態を把握次第、利用者に電話で連絡してくることになります。
なお、この場合、店舗はキャストに対しても、契約違反であるとして、損害賠償請求や指導などの対処をする必要が生じている可能性があります。
不同意性交の場合 キャストと利用者、店と利用者という二つの関係性に問題が生じたことになります。
キャストは、不同意性交の被害者です。利用者との間で、民事的解決を目指すのか、警察に対して被害届を出すのか選択することになります(両方することもあり得ます)。
店舗も実質的な被害を受けたことになりますが、不同意性交の被害者ではありません。被害者であるキャストを助ける立場にあるといえます。キャストから事情を確認し、警察への被害届の提出に協力などをすることになります。警察に被害届が受理されれば、利用者は被疑者として捜査対象となります。
5.トラブルが発生した際の適切な対応
もし、本番行為を理由に店舗から連絡が来たり、警察から呼び出しを受けたりした場合は、慎重な対応が不可欠です。
店舗から連絡が来た場合 罪悪感や恐怖心から、店舗の言いなりになって、不合理な金額の示談書や念書にサインをしてしまうことは避けるべきです。確かに契約違反の責任はあるかもしれませんが、言いなりになる必要はありません。弁護士に相談するなどして、要求された内容を精査する必要があります。
警察から連絡が来た場合 警察から連絡があるということは、すでに被害届が出され、捜査が開始されている可能性が非常に高いです。この段階で、慌ててキャストや店舗に連絡を取ろうとすると、「証拠隠滅」や「脅迫」とみなされ、状況が悪化してしまいます。当事者同士での接触は避け、直ちに弁護士に相談すべき状況です。弁護士を通じて捜査機関に適切な対応を行い、逮捕の回避や、不起訴処分に向けた弁護活動が必要になっているといえます。
